星屑テレパス 明内ユウを中心に雑感

 


 

星屑テレパスという作品との出会いは、グランベルムやまちカドまぞくへの理解度の高さから尊敬しているss書きがその作品を投稿したことでした。#星屑テレパス #明内ユウ 震える手 - snsssの小説 - pixiv

こうやって文章を書いているのは、感想や思考を言語化して、目に見える形で残したかったから。後から見たときに、自分の見方や、心理状況なども推しはかれるから。

とにかく星屑テレパスの原作4巻までの読後、何点か印象的だったシーンを軸に感想をまとめました。

 

1.足元の描写の多さ

 私のこだわりとして漫画を読んでるときも、いちいちカメラの位置や光源の位置を確認しながら読むようにしています。星屑テレパスでは足元のアップのコマが多く、効果的に感じました。以下にそのいくつかを紹介します。

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『星屑テレパス』4巻P14 7コマ

モデルロケットの大会で、龍岡科学技術高校の秋月先輩と選手権ぶり(原作2巻・アニメ8,9話)に再会するシーン、紆余曲折を経た瞬の成長を、あえてカメラをずらして余韻を持たせる…ということだと考えました。

他にも、丁寧に読んでいくと、この画角がそれ以上の役割を持つことも分かります。というのも、次のシーンはその大会の結果発表の場面。

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『星屑テレパス』4巻P15 5コマ

このようにモデルロケットの発射から、場面が変わり結果発表のコマ。この時点で「ん?長靴?」と思わせて、この先のお約束のような展開にスムーズに繋がります(少なくとも私はそう読んでおり、上手いなって思ってました)。

勿論、映像作品において、場面が切り替わる際などに、状況説明なども兼ねてカメラが下からパンすることは多いと思いますが、その意味でも映像的な4コマ漫画に感じます。

 

他にも映像的なコマとして私が好きなのがこれです

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『星屑テレパス』3巻P100

1ページ丸々の引用になりますが、これ以前のページでは明内ユウ側に重み付け…というか、ユウを視点人物に据えて不穏な雰囲気が流れており、ユウから2人で話したいと切り出しました。その流れを汲んでか、3コマ目まではユウが主役のように描かれており、4コマ目は海果の心情を説明することで全体としてユウ側に寄ってたものを、ひとまず海果視点での一般的な思いを示します。5コマ目はこれまでとは打って変わって2人だけの教室を引きの絵で写して、6、7コマと海果の背後から海果の目線へとズームインしていきます。ここでのズームインの意味合いや狙いを強いてあげるとすれば、視線の誘導や、緊張感の演出かなと考えます。実際に8コマ目のユウは海果の話も上の空の様子で、話が噛み合っていません。すごく映像的な表現だと思います。アニメで見ると映えそうで楽しみです。

 

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『星屑テレパス』3巻P97 6コマ

ページは前後しますが、ここの足元の表現も大好物。海果ちゃんが人前で喋るのに大きな勇気を出して頑張ったのを、背伸びで示唆しています。お喋りが苦手な海果ちゃんも背伸びして頑張った😭😭😭って私も勝手に感情移入して泣きそうになりました

 


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『星屑テレパス』3巻P102 8コマ 

『星屑テレパス』3巻P103 1コマ

足元という観点はここで終わりますが、これはユウと海果のすれ違い(私とだけおでこぱしー)が(一旦は)解消されるシーン。写っているユウにしてみれば安堵のシーンです。でも、なんとなく違和感を感じます。そういうすれ違いの解消されるシーンならば、ユウの表情と共にバストショットだけで良いと思います。わざわざこの足元と共に「…なんだ よかったぁ…」の台詞を入れる意図がなにかあると考えるのが自然だと思います(これまで読んでいて星屑テレパスはほとんど全てのコマに意図が考えられると信頼があるので)。

 


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『星屑テレパス』3巻P104 4〜8コマ

『星屑テレパス』3巻P105 3コマ

読み進めていくと、まさにその通りで、ヘタッとしたユウの足元は、その次の「置いていかれる」「隣を歩いていけない」という海果の成長にやきもちをやく停滞を願う暗い意味合いに繋がることが分かります。

 

 

2.作品全体に存在するさかさま

 宇宙やロケットをテーマにした本作品を読むにあたって、天体や宇宙といったスケールの大きさと可愛い女の子のお話で、そのコントラストも浪漫だな〜って1巻を読む以前から思っていましたが、そういうものも、星屑テレパスでは恐らく狙って描いてると思います。

作中でキャラクターの口から明示されるのは4巻、大きな問題が解決したユウから。

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『星屑テレパス』4巻 P110 5〜8コマ

ここまでの総括的ですが、基本的には「さかさまの気持ち」でこれまでお話が動いてきたと言っても過言ではありません。

 

 

そして、「さかさま」、つまり、両面的な意味合いを持つ概念の共存はキャラクターの心情だけでなく、構成や展開のマクロな視点でも見られると思います。


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『星屑テレパス』4巻 P35 6〜8コマ

『星屑テレパス』4巻 P47 2コマ

ここまで読んでくれている方は既読だと思うので、あまり説明はいらないと思いますが、上記の2つは、共に他者から規定される自分らしさ・アイデンティティの文脈の話になっています。

ところが、一方は新たな自分や変化の背中を押すポジディブなもの、一方は少し怪しく、自分を縛り付けるものとなります。展開としてもさかさま…というか、似てるようで正反対のものが連続します。

 

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『星屑テレパス』4巻 P86 6コマ

余談ですけど、上の画像は海果の言葉をアイデンティティ、確立すべき自己として捉えて、悩んでるユウちゃんですが……ここのユウちゃんの顔、可哀想だけど良すぎ!イケメンすぎ!辛いところだけど、曇ってるお顔も本当に良い😭

 

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『星屑テレパス』 3巻 P115

更に余談ですけど、これはやきもちのもやもやに振り回されて曇っていくシーン。何度も登場しているように海果はユウにとっての明かりである、つまり、宇宙人明内ユウは海果がいるからこそ、自分の過去や素性について未知なままの宇宙人明内ユウであるということを象徴するシーン、それが絵でも表現されててすごく良い☺️

 

3.明内ユウ

 正直、この文章を書いているのも、3〜4巻に渡る明内ユウちゃんの成長に感動して、いても経ってもいられなくなったからが1番大きいです。4巻収録の43話44話は明内ユウちゃんが、過去の記憶のない宇宙人明内ユウから、誰かに与えられるわけでもなく、自分の力で"明内ユウ"になることを決心するお話だと思います。

 

 "宇宙人の"明内ユウちゃんは、海果の成長にやきもちを焼くことに嫌気がさす自分の暗さを、自分の記憶の不明瞭さと重ねて、海果の明かりを「一緒に歩く道しるべ」ではなく、自分の輪郭を型取る明かりとして、自分の自己同一性と重ねてしまいます。

それでも、海果を中心にロケット研究同好会の面々の頑張りもあり、「道しるべ」としての海果の明かりが、つまり、海果の宇宙への想いや、海果の言葉が、3人を導き、宇宙人明内ユウを形作ったことは肯定しつつ、自分を見失わないように、ユウ自身が、これまで3人がやってきたように、みんなとの記憶、意識、出会い、それらの可能性に耳を澄ませ、海果の隣を歩いていけるように、怖がらずに変化に身を投じ、自分で“明内ユウ”を見つけることを決意します。

 

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『星屑テレパス』4巻P117 5〜8コマ

ユウの主体的選択、誰かに依存するのではなく、自己と向き合うことで強固に自己を確立し、本当の意味で一緒に歩いていくシーンですが、最後のコマ。

本記事でも前半に取り上げましたが、

 

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『星屑テレパス』3巻 P104 5〜8コマ

ユウが、海果にやきもちを焼くきっかけになったシーン。置いていかれる足元の描写が印象的だったコマと、綺麗に対応するようになっています。綺麗。

 

また、個人的な感情ですが、ユウが恐らく、地球に慣れるために人間的な容姿になった?みたいな感じだと想像しますが、下の画像のように、人間に必要な成長、変化を人間の上位存在が、肯定する点も好き。あえて宇宙人側、明内ユウが人間らしく泥臭く自己を確立するために些細なことから変化や成長を遂げるのは、すごく人間讃歌的でもあります。


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『星屑テレパス』4巻 P104 3~5コマ目

 

4.おわりに

 星屑テレパスは、SFらしく宇宙やロケット、未知との遭遇を扱っていますが、そのスケール感とはさかさまに、その着地点は経験や出会いを自身に還元する地に足のついた物語になっています…少なくとも私はそう思いました。地道で泥臭くて、でも成長や改善に必要な変化を肯定し、それを恐る必要はない、と勇気をくれる作品です。尚且つ、4コマや漫画としても興味深い点が多い、非常に面白い作品だと思います。